春過ぎて

夏来(きた)るらし

白たへの

衣干したり

天の香具山

持統天皇は天武天皇の皇后だ。

音で覚えているのが

春過ぎて

夏来(き)にけらし

白たへの

衣干すてふ

天の香具山

で、こちらは百人一首版のようだ。

藤原定家が編んだので、彼の好みに修正されたものと思われる。

夏来(き)にけらし

だと、「夏がきたらしい」

衣干すてふ

だと、「衣を干しているそうだ」

という、I heardの伝聞になる。

でもやはりここは自ら政治を執った女帝らしく

待ちに待った夏の朝、さっぱりとした空気に気分良く、ご自分で白い衣を干した、

としたほうがしっくり来る。

何しろ『古事記』『日本書紀』編纂を命じた天武天皇のお妃だ。

雰囲気は、こちらのほうがいい。

で、このうたが大好きなので、舞台となった天香久山に行こうと決めた。

朝、あまりに天気がいいので、思いついた。

どうやって行けばいいのかわからないが、調べるとJR香久山駅から徒歩で行けそうだ。

行きましたよ。電車乗り継いで。

ようやく着いたら

なんと! 無人でホームが一個しかない。大丈夫か?

てか、電車内で料金を払ってくださいと言ってた。

Suicaはどこでタッチすればいいのだ?

・・・もう電車おりてるし・・・。

と、無人の改札にタッチする機械があった。

それはいいけど、駅を出ても、香久山がどこにあるのかわからん。

戸惑っていると工事の見張りみたいな仕事してるおっちゃんが

「どこ行きはるん?」

と。

「香久山です」

「ああ。ほな、一緒に行きましょか」

「!?」

香久山って、工事の見張りのおっちゃんと一緒でないと行けないのか?

そういうルールなのか?

おっちゃん、インカムで「いまそちらに行きます。交代時間やから・・・」

とか言ってる。誰に言ってる? 香久山本部か?

交差点に来て

「ほな、ここまっすぐ行ったら香久山やから」

「あ、ありがとうございます。歩いてどれくらいでしょう。一時間くらいですか」

「わからん」

出会い親切、別れツン。

ともかくまっすぐ歩くことにした。

したけど、こんな景色である。

この先、どこまで行けば香久山なのか。

そもそもトイレはあるのか。途中に。香久山のどこかに。

トイレに行きたくなってきたぞ。

あ。

「営業中」

の旗がひらめいている。

カフェのようだ。

あそこに行って、聞いてみよう。ついでにトイレもお借りして。

手作りケーキとあるから糖分補給しよう。

何を隠そう、オレは世界でいちごのショートケーキが最も好物である。

コーヒーもおいしかった!!

カフェ・ド・サンティエ(→クリック!)さん

奈良県橿原市出堀内町18-6

0744-24-1862

木曜日定休

2000年からこの地でやっておられるので、オレの独立と同期だ。

親しみがわく。

ご親切に、地図をくださったのだがこれが上級者向け(笑)

なんとかなるだろう。

もともと講座『古事記を遊ぼう!』の第二回遠足候補としての天香久山なのだ。

オレが行けたら、きっと、年下のみんなも行けるはず(笑)

こんな景色や

こんな標識や

こんな景色の中を一人黙々と歩く。向いてない。

まったく、いやはや、まったく、向いてない。オレはこういう景色に。

ジュリーデビュー曲『君をのせて』を歌いながら歩いていたら、着いた。

天香久山神社。

おそらく、ここが天香久山の麓なんだろう。

ようやくこれから登山が始まるのだ。

腹が減ったので、今日はここまで。

果たしてオレは無事生還できるのだろうか。

(続く)