電球の製造に必要な発明をしたのはエジソンだけではなかった。英国の

物理学者ヨゼフ・スワンも同じ発明をしていた。技術的にはむしろスワン

の電球のほうが優れていた。げんにエジソンは自社工場で製造する電球

のためにスワンの特許を買ったほどだ。

Edison was not the only one who identified the inventions that

had to be made to produce a light bulb. An English physicist,

Joseph Swan, did so too. Swan developed his light bulb at

exactly the same time as Edison.Technically, Swan’s bulb was

superior, to the point where Edison boughtup the Swan patents

and used them in his own light bulb factories.

*Innovation and Entrepreneurship p.118より 翻訳は阪本

では、エジソンとスワンの違いは何でしょうか。スワンは製品としての

電球を生み出しましたが、エジソンは電気産業をイメージングして、戦

略を練っていました。電球は電気産業を成立させるための手段に過ぎな

かったのです。

さて、ここから話は現代へ。

電子書籍について考える時、日本の出版社は、単にいま紙として存在し

ている書籍をデジタル化することしかイメージングできていません。

著者(たとえば私)は原稿をデジタルで執筆し、納品し、出版社は紙

にします。紙をそのまま電子にするだけなら、いわばいったん作った冷

凍食品を解凍するだけの話になってしまいます。

大事なことは、「読者がいかなる新しい体験を楽しむことができるか」

というイメージングです。たとえば、私が来年執筆を開始しようと考え

ているデジタル本なら、ケーススタディに取材先の動画をはめこむのは

無論のこと、掲載データがminute by minute(分刻み)に変化するよう

にしたい。これこそが、「イメージングから製品を考える」思考プロセ

スです。ところが残念ながら、この私の発想を実現してくれる出版社は

いまのところ日本にありません。次は外国の会社と組むか、あるいは、

自社でやってしまうか、と構想しているところです。

*JOYWOWメルマガ 2010年11月4日発行・第113号より転載