ニュースを見ていたら、新潟県佐渡市のトキがビタミン不足で

ヘンな動きをしているため、環境省がみみずや昆虫といったエサを

与えるようにしているという。

何でも、ビタミンB1を破壊する酵素をもったどじょうを食べ過ぎたらしい。

環境省、やさしいなあ。

トキが食べ過ぎてメタボになったら、ピラティス実践DVDをプレゼントするのかな。

トキにかぎらず、ヘンな動きをしている年寄りはいっぱいいる。

今日なんかでも、バスに並んでいたら、前のばあさんが予想のつかない

動きをしたため、後ろに並んでいたおじさんがつっかえ、あやうくおじさんの

後ろにいたぼくまで「玉突き衝突」するところだった。

それで思い出すのが、昨日読んだ奥田英朗の新作『純平、考え直せ』(光文社)。

純平のイメージぴったり!素晴らしいカバーイラストです

純平のイメージぴったり!素晴らしいカバーイラストです

なんともはや、現代日本を遠慮なく描写したらこうなったよ、

という、痛い小説だった。

痛い、というのは小説の完成度への褒め言葉です。

実は、現代日本社会って、ここまで病み、ここまで冷たく、ここまで暗く

なってしまっているんだ、という実相を手触りできる。

主人公純平は21歳。組の盃(さかずき)を貰ってまだ2年目。

組の使い走りだ。

何としてでも北島のアニキみたいに「のし」たい。上がりたい。

そんな純平に、鉄砲玉の仕事がふりあてられる。

のしあがる千載一遇のチャンス。

小説は、鉄砲玉を決行するまでの3日の物語。

それまでは孤独だった純平だが、「シャバで過ごす最後の3日」になった

途端、ものすごく人と出会う。

間接的だが、ネットの住人たちも絡む。

しかし、この小説に出てくる人たちはすべて、

一人称単数 (オレ、私、ワタシ)

でしか、考えられない。

純平は純粋だ。

純平と知り合う同世代の若者たちも純粋だ。

ネットの住人たちは、掲示板で、「鉄砲玉事件」

をネタに盛り上がる。

中には、「いまから歌舞伎町に行って、純平君を説得し、

鉄砲玉なんて馬鹿なことをやめさせましょう」と呼びかける

人まで現れる。

ネタばれになるので、これ以上は書けないが、

若い人たちが一人称単数でしかものを考えられない社会というのは

おかしいと思う。

それは、若い人たちが社会の「炭鉱のカナリア」の役割をしているとするなら、

既に彼らは本能的に「だれも救ってくれない」ということを知っているからだ。

社会も、学校も、地域も、家族も、ともだちも、ネットも、だれも救ってくれない。

誰にも手をさしのべない社会

これを何とかしなきゃな、と思う。

まずは、隗より始めよ、何ができるだろう。

・・・明確な答が見つかってないんだよね。

何にしても、手を出してきた人の手はしっかりつかむこと、

これを一つひとつ実行することからだろう、と思っている。