2000年、一橋大学教授の講演を聴く機会があった。

たしかだれか主催者への義理で顔を出したんだ。

教授は、ビートルズの「Revolution」を大音量で流し、それを

BGMに登場した(関係ないが、同じころのぼくの登壇BGMは

吉本新喜劇のそれだった)。

教授はスライドに大きく蒸気機関車を映し出し、

「これは人類の第一次産業革命」と言った。

つづけて、現在私たちが直面しているのは新しい産業革命であり、

その主役となるのがITだ! と叫んだ。

そして、唐津一先生を名指しし、口真似までして、

製造業は既にout of trendであり、製造にこだわっている

唐津先生自身も時代遅れである、という趣旨を述べた。

ITは人々にパワーを与える。だから未来はバラ色だ!

と教授は楽観的だった。

ぼくはそんなに楽観的にはなれなかったし、製造業こそが

日本の強みだと思っていたので、それに反発するように

『スロビ』を書いた。唐津先生をリスペクトしていた(いまもしている)し。

ITが人々をempowermentするというのは確かだし、

情報武装した顧客を企業がダマせなくなったことも、

ビジネス1.0の寿命を縮めたことは間違いない。

でも、ITは革命ではなく、いまから思えば業務、即ち

operationのイノベーションにすぎず、ビジネスのOSそのものを

変革するほどの力は持ち得なかった。

新しいビジネスモデルの成功例、例えば日本でいうなら楽天、

アメリカならGoogleなども生まれたが、いわゆるビジネス2.0

といえるようなブレイクスルーやmanagement innovation

とは言い難い。製品・サービスのイノベーションというか、

戦略イノベーション(戦略、という言葉は使いたくないのだが)

の範疇だろう。

だから、教授がぼくと同じ靴を履いて気を吐いていた頃はまだ

人類はITによっては革命を起こしていなかった。

しかし、革命は、どんな時でも「深く、静かに進行する」。

ニューヨーク時代、贔屓にしていたホールフーズ(→)

1992年の株式公開以来、破竹の勢いで業績を伸ばしていた。

それも、「生鮮食品スーパーで、割増価格にて野菜を売る」

という、斬新な「在り方」で。

また、アトランタのインターフェース社(→)は、1994年から、サプライチェーンの全体を

「地球に負荷をかけない」見直しをかけ、なおかつビジネスとして株主を

満足させる好業績を上げる、という一見二律背反なミッションに

取り組んでいた。

これこそが革命であり、面白いと思う。