映画『のぼうの城』(→クリック!)はきわめて現代的なテーマを扱っている。

舞台は戦国時代だが、テーマは現代だ。

戦国時代を特徴づけるものとして、その哲学がある。

つまり、「国取りこそわが使命」という陣取り合戦だ。

80年代、マイケル・ポーターの戦略論がもてはやされていた頃のビジネスが掲げていた

旗には、くっきりと、「ライバルを蹴散らせ!」と書いてあった。

きけば、ポーターの父君は軍人との由。なるほど、と納得である。

のぼうの城の登場人物も、「陣取り合戦」こそが「働く動機」である。

ただし、「のぼう」以外は。なぜ「のぼう」と呼ばれるかというと、

「でくのぼう」から来ている。

でも、のぼうこと「成田長親(なりたながちか)」は領民である農民たちからは慕われている。

秀吉軍2万が攻めて来た。こちらの戦力は500。1/4だ。

絶体絶命のピンチにあったまさにそのとき。

のぼうが取った戦略は、戦略論でいうところの「プラットフォーム戦略」だ。

つまり、相手(敵)との関係を「戦う敵」(味方)と一面的にとらえるのではなく、

多面的にとらえ直した。

プラットフォーム戦略とはアップルがとっているもので、iPhoneやiPadをApp Storeの

売り場=プラットフォームとしてとらえる戦略だ。

ぼくたちはiPhoneを買って持ち歩いているけれど、同時に、

アップルの売り場(キャッシュレジスター)を常時持ち歩いていることになる。

ベッドサイドにアップルのレジがあるようなものだ。

では、のぼうのプラットフォーム戦略はどうしたか。

場を、「戦いの場=戦場」とだけとらえるのをやめた。つまり、「強い」「弱い」

という、「相手とのパワーバランス」という従来からあるとらえかただけではなく、

「敵も味方もない」「敵を味方につける」「みんなで楽しむ」

という、「戦場のプラットフォーム化」をしたのである。

これ以上書くとネタバレになるのでやめるが、これこそ、まさにイノベーションだ。

戦略のイノベーションをし遂げたわけで、このおかげで、「いいこと」が起こる。

映画は100年後の戦場を映し出す。

戦って、怒って、泣いて、悔しがって・・・100年経ったら。

いやー。面白い。勉強になるよ!