JOYWOWに3カ年計画とかいうものは、ない。

それどころか、来年の計画すら、ない。

会社(JOYWOW)もそうだが、ぼく個人にもない。

ただ、淡々と、スケジュールや仕事が埋まっていくだけである。

ルーティンの仕事(コンサルティング、MAIDO-international、

など)を軸として、スケジュール先に押さえていく。

それだけ。

・・・ええんか?

と思っていた。

経営コンサルタントとして・・・てか、社会人として、

こんな無計画なことで、ええんか?

少なくとも「ビジョン10(テン)」とかいう名前ついた経営計画やって、

「2023年にはこれこれこんな風になっていよう、オー!」

という感じの朝礼の一つもせな、あかんのとちゃうか?

と思っていた。

しかし、ですね。

HONDAの米国進出ケーススタディを考えていくうちに、

「じっくり考えた戦略でも、うまくいかない。

たまたまうまくいくこともある」

にいたり、そやなあと。

HONDAのケースというのを、かいつまんで言うと、こうだ。

1960年代、HONDAはオートバイでアメリカ市場を狙った。

アメリカはハーレーダビッドソンやら、大型バイクが人気で、

魅力的な市場を形成していた。

HONDAは、

「ハーレーたちがいる大型バイク市場へ

HONDAバイクを格安価格で投入し、なぐりこみかける。

結果、市場シェアの10%も取れればいいよね」

と戦略立てた。

いざやってみると、あかんかった。

ほとんど売れなかった。

ハーレーで満足しているアメリカ人にとって、HONDA

のバイクを買う理由など、見当たらなかったのである。

まれに売れたとしても、バイク文化の違いがあった。

アメリカは広い。

ハンパなく長距離をバイクで走る。

そうすると、HONDAのバイクはオイル漏れしてしまった。

HONDAのバイクの修理ができるディーラーは少なかった(ほぼ、皆無だった)。

仕方ないから、HONDA米国支社は日本へ送って修理したが、

これはだれが考えても「続く話」ではなかった。

売れない。資金はみるみる底をつく。

HONDA社員にとって、逆風の日が続いた。

面白くないので、休日、近くの丘陵地帯を、日本から持ち込んだ

小型バイク「スーパーカブ」で乗り回して遊んだ。

気晴らしだ。

それを見ていたアメリカ人が、「それ、どこで買えるんだ?」

と聞いてきたが、売り物じゃないので、と断った。

しかしそれからもあんまり言ってくる。

そこで、オフロード用バイクとして、日本から取り寄せ、

売り始めたところ、大ヒットした。

ロード用の大型バイクは売れず、

オフロード用の小型バイクは大いに売れた。

それどころか、バイクをオートバイディーラーではなく、

スポーツ用品店で売る「スポーツ用品」として

のポジショニング転換までしてしまった。

アメリカ人の意識内にある「バイク」を

再定義してしまったのである。

バイクカスタマーを奪うことはできなかったが、

ノンカスタマーをカスタマーに創造した。

これは、「意図せざる戦略」だ。

意図した戦略は、「アメリカの大型バイク市場を低価格で

浸食する」だ。

つまり、考えたって、わからんもんはわからんと(笑)。

それでいいのか?(笑)

いいのだ、と、ハーバード大学のクレイトン・クリステンセン教授は

太鼓判を押してくれる(*)。

*How Will You Measure Your Life? ,p.42-61

邦訳『イノベーション・オブ・ライフ』翔泳社刊

 

よっく考えた戦略をdeliberate strategy(意図的戦略)

偶然うまいこといった戦略をemergent strategy(創発的戦略)と呼び、

どっちも「あり」としている。

3カ年計画とかいうのはdeliberate strategyであり、

それはそれで重要だが、忘れてはいけないのが、

その戦略を成立させている前提は何か?

のほうが、実はとても重要なのだ。

事前に、そして、事後でも前提は検証可能だから。

前提が検証可能なのか、困難なのかでぼくたちは

deliberate strategy(意図的戦略)と

emergent strategy(創発的戦略)の

バランスをうまく取るのが、賢明なんだろうね。

葉山マリーナにて

葉山マリーナにて