テレビを見ていたら、あるビール会社の開発担当者が出ていた。

彼が研究しているのはノンアルコールビールである。

ノンアルコールビール?

「あるやん!」

思わず画面にツッコミを入れてしまった。

彼は材料の配合やら、何やらを毎日一所懸命試行錯誤しているらしい。

とても良い人に見える。

会社の空気も、いい。

しかし。

これでいいのか?

もちろん、彼のビール会社の製品ラインアップにノンアルコールビールは

「まだない」のかもしれない。

「まだない」から、「ラインアップに加える」ために開発している

のだろう。

でもそれって、月島でもんじゃ焼き屋を新たに一軒開店します、と、汗流して

準備している人とどう違うの?

彼の人生の大切な時間が、

電子顕微鏡で見なければ違いのわからない「+1」のために費やされる

のが、果てしなくもったいなく思えた。

企業のR&D(研究開発室)からロクなものが生まれないのは

名作『イノベーションのジレンマ』内でもクレイトン・クリステンセンが言っている

通り。

理由は、上司決裁があるから。

上司はその上司の顔色を見て決める。

Yes/Noは、上司の上司次第。

ところがもともとイノベーションは、Yes/Noのわからない世界、

混沌、カオスからしか生まれない。

+1は、決済がおりやすい。

実績、前例があるからだ。

ノンアルコールビールを一所懸命作るより、

「ノンビールアルコールができたのだ!」

とシャレで叫んだほうがよほど面白い。

+1は、やめよう。