長い旅に出るときは、いつも何か一冊の本をお供にする。

昨年9月のホノルルの時は村上春樹の『走ることについて語るときに僕の語る

こと』だった。ややこしいタイトルで、いまだに覚えられん。

成田空港で見つけた。

今回のニューヨーク行き、成田で二冊、候補を買って行った。

そういえば、その成田の書店で、狭い通路にもかかわらず座り込んで

スマートフォンのゲームをしているオタク・ガキ青年がいて、蹴っ飛ばして

やろうと思ったのだがそう思った時に背表紙が目に入ってそれが

『蹴りたい背中』だったので、思わず笑って、蹴るのは許してやった。

二冊は『赤塚不二夫のことを書いたのだ!!』(武居俊樹)

『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります」(川上未映子)

ぼく的には川上さんのほうが関西ノリでぴったりくるのだが、

なぜか読み続けたのは『赤塚不二夫・・・』のほうだった。

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著者は小学館で赤塚不二夫を長く担当した編集者。

これがまあ、プライベートで会ったら、100%ウマが合わないタイプ。

やだなあ、こういうの、オレ、あかんなあ、嫌いやなあ・・・

と、作家の立場から嫌がり、それでも風呂に入りながら、

ずっと読んでた。

ベッドサイドには、常にバカボンのパパの顔があったことになる。

で、話は、部屋担当のメイドのおばちゃん。

一週間もいれば、おばちゃんと顔見知りになる。

朝も、昼間も、おばちゃんは狭い廊下にカート置いて、常にどこかの

部屋を掃除してくれている。

会う。顔を合わせる。

“Good morning! How are you?”

いつもこの挨拶だ。笑顔がいい。

“Clean up my room, thank you!”

と、出かけるときは一声かけていく。

そうしないと、おばちゃんとしても、掃除していいのやら

どうやらわからないから、早く帰れないだろうと思ったからだ。

ほぼ一日、ホテルの廊下と客室にいて、せっせとベッドシーツ換えたり、

風呂掃除したり、ゴミ出したり、してくれる。

一日中だからね。いくら仕事とは言ってもね。頭が下がる。

だから、ピローチップも、いろいろおまけをつけて、置いた。

ドル札以外に、たまった小銭やら、チョコレートやら、飛行機で

もらったアメニティグッズの入った小さなバッグ(もちろん未使用)

やら。「よかったらもらってください」とメモ置いて。

おばちゃん、良かったなあ。

最後の日曜だけ、別の若いおねえちゃん二人で、そら、おばちゃんも家庭

があるし、日曜は休ませてあげないといかんわなあ、と思ったけど、

おねえちゃんたちはさすが粗い仕事で、やはり人によってルームメイクも

違ってくるんやなあと思った次第。

しかし、いつもベッドサイドにあるバカボンのパパの顔を見て、

おばちゃんはいったい何をどう思っていたのやろ。

一度聞いてみたいと思いつつ、忘れてしもた。

おまけで、実践旅英語。

アメリカはたいして実力ないくせに、ホテルの鍵を電子カードにしちゃったり

する。せんでもええのにねえ。言わんこっちゃない、これがまた、簡単に故障する。

使えなくなるのだ。

そういうときは、フロントにこういう。

“My room key doesn’t work”

ついうっかり、部屋に鍵を置いて出てきてしまった。

“I left my key in my room!”

部屋から見下ろした7th Ave.

部屋から見下ろした7th Ave.