日経の石橋さん(&桜井さん)から寄贈いただいた
立川直樹さんの『TOKYO1969』。

tokyo1969

制作の段階で桜井さんからこの本の企画を
おうかがいしていて、是非読みたいと思って
いた。

この週末は仕事の合間に開いてはちょこっと読み、
また読み、ついに昨夜は風呂にまで持ち込んで読んだ。

それほど面白いのである。

1969年といえばぼくは小学5年生、兵庫県尼崎に
いて、小学校裏にあった話題の工場から大気中へ
流れるアスベストを大量に吸い込んでいた頃である。

アスベスト被害はぼくに関していうと全くなく、
むしろ公害真っ最中の阪神工業地帯で育った
おかげで人工物にはとても強い体質になった。
反動で自然にめっぽう弱く、いまでも登山は
苦手である・・・って関係ないか。

ということで1969年を同時代として理解はできない
し、兵庫県で育ったぼくにとって
そもそも当時の東京の持っていた空気感を
知る由もないのだが、そういうことは全く関係
なく、
「確実に当時そこにあった時代の空気、都市のオーラ」
がこの本からビンビンに伝わってくる。

著者の立川直樹さんは、ビートルズLPの
ライナーノーツで知っていた。
あこがれのアニキ、という位置だ。
ぼくにとっては。

刺激的な文章が表現が一杯ある。

   何でも物が安い、安いと言い始めたこともだめだよね。

 *ファストファッションの台頭に異和感を感じている
  ぼくに、その理由を示してくれた

   うん。例えばルイ・ヴィトンを買うというのは大変な
 ことだったし、デュポンのライターだってそうはみんなが
 持てなかった。公平さがだめにしている。だめというのは、
 僕等が言っている文化を壊してしまったというのはあるかも
 しれない。

 *「あこがれ」が成り上がりを作る。だから21世紀には
  かつてと同じ意味の成り上がりは生まれにくい。

   情報が民主化されちゃっている

 *書店に欲しい本がない、という現象の背景
  をきちんと説明してくれている

   格差があるから文化が生まれる

 *ここでいう格差は経済的格差ではなく文化的格差

    ワクワクして、のめりこみ読んでいる。

 そして、この本の持つもう一つの意義は、版元が日経だと
いうことだ。まるでパルコ出版とか、サブカル方面の出版社
から出てもよさそうな本であり、それを日経が出していることに、
とても大きな意義を感じる。

日経は須田郡司『日本石巡礼』のような本も出している。
これは日本全国にある巨石、奇岩、怪石、大切に祀られてきた
石などを巡って撮り続けた須田郡司三年間の記録である。

 時代に斬り込む企画創出力という、出版社にとっての
生命エネルギー源を失いつつある版元の多い中、日経の姿勢は
素晴らしいと思う。

写真は、『TOKYO1969』と、60年代といえばビートルズっしょ、
ということで、『ラバーソウル』を。1965年の作品だけどね。