ムカつくことがたて続けに二つ、起こった。

ぼくは滅多なことで怒らない。

それでも「ちょっとこれは抑えるの、キツいなあ・・・」

というくらいの重量をもった怒りの渦が胸にざわざわしていた。

消えない。

そんなとき、ふと書棚を見たら一冊の本の背表紙が浮かび上がってきた。

西郷南洲(隆盛)さんの遺訓を森信三先生が解説講義された講義録。

『森信三講録 西郷南州の遺訓に学ぶ』→クリック!(致知出版社)

ふと開いたページにある言葉が目を射抜いた。

「人を相手にせず、天を相手にせよ。天を相手にして、己れを

尽して人を咎めず、我が誠の足らざるを尋ぬべし」

人を相手にしているから、人の出方で動揺する。

人は勝手なもので、相手が自分の意に沿うような意見や行動を

したら気分がいいし感謝もするが、その反対だと相手に不満を

抱いたり、怒ったりする。

これは相対の世界である。

そうではなく、天、つまり絶対の世界でいけ。

天は自分のなすべき天命であり、それは人がどうこういう話ではなく、

すべて自分の問題だ。

『大学』メインテーマ三つ(明明徳、新民、止於至善」

にもあるように、止於至善、絶対の世界は、大人(たいじん)に

とって必要不可欠な心の姿勢である。

西郷さんのこの言葉で、救われた。

すべて自分、なのだ。

いいことも、気に入らないことも、すべて自分に帰する。

引き受けていこう。