商品開発、ブランド開発の折に重要なのはグランドデザインだ。

生活のどんな新しい楽しさを提案したいのかという。

19世紀末。20世紀を迎えるにあたり、二つの流れがあった。

第一に、大都市の形成。

第二に、偉大なるファラデーのおかげで発見された電気をいかに

商用利用するか。つまりビジネスにできるか。

ドイツのジーメンスは大都市が生まれると、人の生活は

どうなるか、考えた。

そもそも大都市は、なぜ、生まれるのか。

仕事場だ。

人はお金を稼ぐために、地方から、大都市へ、やってくる。

(「地方」という概念も、「都市」が生まれたから

相対的概念として、できた)

つまり、「通勤」という新しいライフスタイルが生まれる。

職住接近ではなくなる。

通勤のための交通手段が必要だ。

電気を利用して、移動手段を作るとどうなるだろう。

ジーメンスは、「電車」というコンセプトを着想した。

電車を可能にするためには、電気を利用した動力源が必要だ。

そこで彼は、発電機を開発したのである。

発電機を開発したから、その用途として電車を考えたのではないし、

大都市への通勤手段として電車を後付けしたのでもない。

最初に「大都市への通勤手段としての電車」というグランドデザインが

あったのだ。

ちなみにジーメンスは世界初の電気式エレベーターも開発した。

大都市ビルにおける人の垂直移動も構想したのだ。

アメリカのエジソンは、大都市ライフに必要なものは新しい照明の

方法だと着想した。ランプでもろうそくでもなく、電気を利用した

電化ライフが照明のエネルギーとなる。

そこで彼は電化照明に欠けているピースとして電球を導きだした。

電球の発明に取り組んだ。

この場合も、電球を発明したから、そのあとに電化ライフを発想

したのではないことに注意しよう。

つまり、最初にグライドデザインがあったのだ。

グランドデザインというアプローチ、いまこそ、重要だと

思う。

そして、それを実現するための組織体内時計も。

現在、特に大企業は、組織の体内時計が短期になって

しまっている。三ヶ月ごとの業績レビューなど。

大企業こそ、リソースに恵まれているのだから、体内時計を

スローに設定する必要がある。

組織の体内時計と意思決定速度は反比例する。

つまり、大組織では、意思決定速度は極めて遅い。

稟議というシステムが速度を落とす障害物になっている。

スローな中小企業が、機会をものにできる時代なのかもしれないね。