うまくいっていないビジネスの当事者たちは

けっして怠けているわけではなく、一所懸命

がんばっている。

残業や休日出勤もやっている。

楡周平『象の墓場』(光文社刊)は

コダックのデジタル化にまつわる実話を

モデルに書かれているが、世界で圧倒的に

プレゼンスを誇っていたコダック(小説中ではソアラと

されている)が「フィルムの終焉」を見越して、

世界初のデジタルカメラを開発していながら、

ずるずると破滅への道を進んでいく。

1ドルで70セントの高収益をあげた

写真ビジネスがあっという間に地球から

消えてしまう。

担当者たちは知恵を絞り、がんばる。

しかしながら、

がんばるベクトル

が違っている。

後の時代に生きるぼくたちだから後知恵で結末を

知っているけれど、小説の主人公たちと同じ立場に

置かれたら、やはり同じ悩みを悩んだに違いない。

「いまぼくたちが懸命に掘っている井戸、

実は間違った井戸じゃないのか? いくら

掘ったって、水なんか出てこないんじゃないか?」

と気づけるか、どうか。

やはり違う業界の、「ゆるくて弱い関係」

スタンフォード大学マーク・グラノヴェター教授

いうところのweak tiesをどれだけもっているか、

が、まじで重要だと思います。

同じ会社のstrong tiesばかりと酒飲んで、遊んで

いるようでは、間違った井戸を掘っているかどうか

なんて、気づかないから。