「マタイ効果」(The Matthew Effect)という学説がある。

社会学者ロバート・K・マートンが提唱した。

たとえば、著名な研究者にはますます研究費が与えられるから、

さらに良い研究ができる。

しかしながら著名でない研究者にはそのような恩恵がないため、

ますます両者の研究成果に差ができる。

新約聖書マタイ福音書(Matthew 25:29)にある

「持っている人は与えられ、ますます豊かになるが、

持っていない人は持っているものまでも取り上げられる

For unto everyone that hath shall be given, and he shall have

abundance. But from him that hath not shall be taken away even that

which he hath.」

に由来する。

例えば、村上春樹はベストセラー作家だからますます売れる。

売れるから取材費や執筆時間に余裕が出来る。

作品の品質がますます上がる。

作品品質がますます上がるからますます売れる。

マルコム・グラッドウェルの傑作『Outliers』(邦訳は『天才!』講談社刊

のテーマは興味深い。

たいていのサクセスストーリーは貧しい家庭に生まれた人が獅子奮迅の努力を

して、懸命にはいあがり、成功する「飛び抜けた一本の木」についてだ。

しかるにグラッドウェルが『Outliers』で書いたのは「飛び抜けた一本の木」

ではなく、「その飛び抜けた木を育てた森」について。

セレブはその環境が良いからますますセレブになる。

残念な環境にいる人はますます残念になる。

人生には受け入れ難い真実がいくつかあるが、これもそのうちの一つだ。

なぜこうなるのか。

思うに、背景(コンテキスト)の力が大きいと思う。森とは背景を指す。

セレブ(ただお金持ちというだけではなく、あり方もきちんとしている人)

の家は整理整頓されていて、掃除も行き届いている。だから気持ちが

整い、良い仕事ができる。良い仕事ができるから、さらに次の良い仕事を

呼び込む・・・この、善の循環がある。

残念な環境の人は、家の中はほこりだらけ。モノがあふれ、どこに

何があるのやらわからない。不潔で、だから気持ちも整わないから、

仕事の成果が出ない。成果が出ないから、いまある仕事も打ち切られたりする。

・・・悪い循環。

どうすればいいのか?

同じくマートンの言う「自己充足的予言(self-fulfilling prophecy)」を利用すればいい。

人は、最初は間違った定義をしたとしても、それを実現させようと行動する。

つまり、思い込むのだ。

「オレ、セレブ」と。

セレブになりたければ、セレブのように行動すればいい。

今朝出勤したら、マンション一階のゴミ箱が珍しく乱れていて、よく

見たらビニール傘が突っ込まれていた。

資料で両手がふさがっていたが、商売繁盛のため日々がんばっている

オフィスが入居しているビルだ、マタイ効果のマイナスを生む背景を

作ってはいけない。

「真のセレブなら、こういうときどうするか?」自問した(おおげさだね)。

傘をゴミ箱から抜き取り、雨の中、外のゴミステーションへ持っていき、

捨てた。

朝、慌てて持って出た傘。何でこんな絵柄が家に?(笑)

朝、慌てて持って出た傘。何でこんな絵柄が家に?(笑)